22歳、転倒。

2024年4月12日金曜日

 

社会人としての新生活がスタートしていた私はいつも通り最寄り駅へと足を進めていた。

 

金欠大学生が肩書きだけ繰り上がった身分なので、給料日が先か餓死が先かという瀬戸際だった私は節約のため、毎朝おにぎりを作っていた。

 

その日も握りたてのホカホカのおにぎりを片手に、今日を乗り越えれば休みだという喜びを噛み締めながら意気揚々と歩いていた。

 

ふと腕時計を見ると、電車の発車時刻が迫っていた。

「ヤベッ」と小さく呟いた私は冷や汗が滲むのを感じていた。

 

実は、今住んでいるエリアは電車が1時間に1~2本というクソクソクソド田舎エリアなので、1本逃すとケツ穴確定というクソ仕様なのだ。

 

ケツ穴はさすがに回避したいと思った私は、寝起きの体に鞭を打ち、駅までの数百メートルを華麗に駆け抜けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと地面に四つん這いなっていた。状況が呑み込めず口から「アェ……?」と情けない声が漏れる。無駄に痛む両手のひらと両膝、そして心。ふとおにぎりを握りしめていた左手へと目を向けると、無数の米粒とサランラップが手のひらとコンクリートの間から朝の光を受けてキラキラとはみ出していた。

 

もしかして、躓いて転けた?おにぎりは潰れて?22歳にもなって地面のちょっとした凸凹に足を取られて転けた?転倒マ?んで四つん這い?

 

 

あまりのショックに思考が停止する。

 

 

しかし、早朝7時前、住宅街のど真ん中、四つん這い、そして左手でおにぎり.zipを錬成している成人女性(静止)があまりにも異様な光景であることに気づいた私は、0.5秒後には立ち上がり、「遅刻しちゃう〜」と呟きながら再び颯爽と駆け出した。異様な光景である。

 

 

血が滲む手のひらでおにぎり.zipを解凍し、おにぎりにしたものの、おにぎりはおにぎり(砂利混)となってしまい食べれなかった。(砂利のところ以外は食べました。)

 

22歳、転倒。